「バーチャルさんはみている」という言葉を聞いて、「あ…あのアニメか」と苦い顔をするVTuberファンは少なくないはず。
制作には庵野秀明がアイデア協力し、音楽は中田ヤスタカが担当。30名超のVTuberが出演するという豪華さだったにもかかわらず、なぜここまで「黒歴史」と言われ続けているのでしょうか。
実は、放送終了後わずか1ヶ月足らずで制作会社が解散していたというから、驚きですよね。
・なぜ「懲役23分」と呼ばれるほど酷評されたのか、内輪ネタと台本の問題を解説
・制作会社リドが放送終了後すぐに解散した経緯と川上量生の無茶振りエピソード
・出演していたVTuberたちの現在と2025年に全話YouTube無料配信された話題
バーチャルさんはみているが黒歴史と呼ばれる理由
「VTuber界最大の黒歴史」として語り継がれるアニメ「バーチャルさんはみている」。なぜここまで批判されたのか、その内容と経緯を詳しく見ていきます。
どんな内容のアニメだったのか
「バーチャルさんはみている」という言葉を聞いて、「あ、あのやつね…」とちょっと苦い顔をしてしまうVTuberファンは多いんじゃないでしょうか。
このアニメは、2019年1月9日から3月27日までTOKYO MXで放送された全12話のテレビアニメです。
制作したのは「株式会社リド」というVTuberに特化したプロダクション事業を展開する合弁会社。ドワンゴ・KADOKAWA・カラー・インクストゥエンター・アソビシステムホールディングスの5社が共同設立しました。
内容はというと、30名以上のVTuberが出演するオムニバス形式のミニコント番組です。複数のコーナーで構成されており、各VTuberがバラエティ風のコントや寸劇を披露するというもの。
本番組のために結成されたVTuberスペシャルユニット「バーチャルリアル」(ミライアカリ・電脳少女シロ・月ノ美兎・田中ヒメ・鈴木ヒナ・猫宮ひなた)の6名がメインを張り、ゲーム部プロジェクト、ときのそら、バーチャルゴリラ、小林幸子(バーチャルグランドマザー)など人気VTuberが次々と登場します。
制作陣も豪華で、音楽プロデューサーには中田ヤスタカが起用され、「新世紀エヴァンゲリオン」で知られる庵野秀明がアイデア協力として参加。さらに、エヴァの制服がコラボアイテムとして劇中に登場するという凝った演出もありました。
OP主題歌は1〜6話をキズナアイさんが担当した「AIAIAI(feat.中田ヤスタカ)」、7〜12話はバーチャルリアル6名による「あいがたりない」。ED主題歌はHIMEHINA(田中ヒメ・鈴木ヒナ)の「ヒトガタ」です。
見た目は豪華、スタッフも豪華、出演VTuberも豪華…。そんな「豪華さ」と「結果」のギャップこそが、このアニメが語り継がれる最大の理由です。
なぜクソアニメと酷評されたのか
放送開始直後からSNSやネットの各所で批判が殺到しました。「懲役23分」「学芸会」「公式クッキー☆」「やっぱつれぇわ…」といったコメントが飛び交い、Amazonのカスタマーレビューでは星1の嵐に。Filmarksの平均評価も2.2点という悲惨な数字が出ました。
なぜここまで酷評されたのでしょうか。理由は大きく3つに整理できます。
2.5次元という存在の難しさ
VTuberという存在は「2次元キャラクターとして動くが、中身は3次元のリアルな人間」という、3次元と2次元の狭間にいる「2.5次元の存在」です。
このアニメは「2.5次元のVTuberを、2次元のアニメに当てはめる」という試みをしましたが、これが裏目に出ました。
通常のアニメであれば、キャラクターは完全にフィクションの存在として動きます。しかしVTuberの場合、3次元的なエンターテインメント性(即興の面白さ、生の反応、個人のキャラクター)が隠しきれず、「これはアニメなのか?バラエティなのか?」という中途半端さが生まれてしまったのです。
VTuberの魅力である「予測不能な生の反応」と「台本ありきのアニメ形式」は、根本的に相性が悪かったと言えます。
閉塞的なVTuberコミュニティの問題
VTuberのファンコミュニティは独自の文化が育まれやすく、コミュニティ外の人には伝わりにくい「内輪文化」が強く形成されます。
地上波という「不特定多数に向けた媒体」で放送したにもかかわらず、その内輪文化をそのままコンテンツとして提供してしまった。これが第二の失敗です。
「ポプテピピック」のような広範なパロディならコミュニティ外の人でも楽しめますが、「バーチャルさんはみている」の場合は特定VTuberの視聴者でなければわからないネタがほとんどでした。
内輪ネタだらけで初見には意味不明だった
このアニメが「黒歴史」と呼ばれる最大の原因の一つが、徹底した内輪ネタの多用です。
たとえば第1話では:
- ゲーム部プロジェクトが「彼らのファンなら分かる」世界観の寸劇を突然始める
- 猫宮ひなたがPUBGの「ドン勝」というゲーム用語を使って語り始める
- 月ノ美兎と剣持刀也のコーナーが「にじさんじを知っている人だけ笑える」内容になっている
- 電脳少女シロの「シロちゃんの〇〇は為になるなぁ!」というネタに乗っかったコーナーが登場する
これらのネタはVTuberファンなら「あーあのネタね!」と笑えるものですが、初めてVTuberに触れる視聴者には何が起きているのかさっぱりわからない内容です。
しかも、内輪ネタ以外の部分でも問題がありました。つまらない台本が用意されていたせいで、各VTuberの本来の個性や面白さが全く発揮されていないのです。
日常の配信で見せる「予測不能なぶつかり合い」の面白さが、台本によって完全に潰されていた。これには「VTuberのやり方(生配信の予測不能な面白さ)」と「テレビのやり方(台本ありきの演出)」の根本的な衝突があったとも言われています。
内輪ネタと台本のダブルパンチで、ファン以外が楽しめる余地がほぼゼロという状況が生まれてしまいました。
懲役23分と言われるほどの視聴者反応
放送直後から「懲役23分」という表現がネット上に広まりました。これは各話の本編が約24分であることから、視聴者が「これを見るのは苦行(懲役)だ」という感情を込めた表現です。なかなか辛辣ですよね…。
ニコニコ動画では「バーチャルさんはみている」の実況スレが異常な混乱状態になったことも話題になりました。批判コメントが飛び交い、「放送事故」「学芸会」「公式クッキー☆」(クッキー☆は素人による二次創作ボイスドラマの名称)などの表現で批判されました。
Amazonのカスタマーレビューでは星1レビューが多数並び、各アニメレビューサイトでも軒並み最低クラスの評価を受けました。
あにこれβでは53.5点という低評価を記録しています。
興味深いのは、ここまで批判されても「VTuberに興味を持つきっかけになった」という視聴者が一定数いたことです。「悪評でもとにかく知名度は上がった」という側面はあったかもしれません。ただ、それはアニメとしての成功とは呼べないですよね。
「懲役23分」という言葉は今もVTuberコミュニティで語り継がれるほどのインパクトを残しました。
出演VTuberと各コーナーの内容
第1話の放送リストを見ると、いかに多くのVTuberと多くのコーナーが詰め込まれていたかがわかります。
| コーナー名 | 出演VTuber | 内容 |
|---|---|---|
| オープニング〜スタジオトーク | バーチャルリアル、ばあちゃる | メインMCによる導入 |
| VIRTUAL WARS | ゲーム部プロジェクト(夢咲楓・風見涼・桜樹みりあ・道明寺晴翔) | 世界観のある寸劇 |
| バーチャルグランドマザー | 小林幸子 | 大御所歌手によるコーナー |
| レッツゴー!教室 | バーチャルリアル、ピーナッツくん | 全員参加の学校コント |
| 富士アオイ公園 | 富士葵、バーチャルゴリラ | 歌が得意な2人のコント |
| てーへんだ!アカリちゃん | ミライアカリ、田中ヒメ | ハイテンションコント |
| ひなたちゃんは登校中 | 猫宮ひなた | ゲーム脳設定のコーナー |
| うんちく横丁 | 電脳少女シロ | シロのうんちくコーナー |
| 委員長、3時です。 | 月ノ美兎、剣持刀也 | フリートーク系コーナー |
| ユニティちゃんはコロがりたい | 大鳥こはく | アニメーション重視のコーナー |
| ケリンスレイヤー | 田中ヒメ・鈴木ヒナ、ヤミクモケリン | ケリン主役のコーナー |
| 聞いてよしすたぁ! | シスター・クレア、ときのそら、ばあちゃる | にじさんじのクレアメインのコーナー |
これだけ多くのコーナーと出演者がいると、1話あたりで各キャラクターに割ける時間は非常に短くなります。初見視聴者がキャラクターを覚える前にどんどん場面が切り替わるため、感情移入する暇がありませんでした。
特に批判が多かったのが「レッツゴー!教室」コーナー。複数のVTuberが一堂に会してわちゃわちゃするという設定は面白そうに思えますが、台本読まされてる感が強く、月ノ美兎さんが無理にキャラを維持しようとしているのが透けて見えるという指摘も相次ぎました。
一方で「富士アオイ公園」コーナーは意外と評価が高く、富士葵さんとバーチャルゴリラのコンビが比較的自然な掛け合いを見せていたと好意的に評価されています。
Amazonレビューの評価と世間の声
Amazonのカスタマーレビューをはじめ、ほぼすべてのレビュープラットフォームで厳しい評価が並びました。
当時のネット上の代表的な声をまとめると:
- 「地上波でやるべき内容じゃない」
- 「VTuberを知らない人が見ても理解不能」
- 「台本がひどすぎてVTuberたちが気の毒」
- 「見ている方が恥ずかしくなってくる」
- 「VTuberのファンでも普通につらい」
- 「これでVTuberに悪いイメージを持った人がいたはず」
一方で擁護する声もありました:
- 「当時の熱気を感じられる貴重な記録」
- 「VTuberを知るきっかけになった人もいる」
- 「HIMEHINAの歌のシーンだけは感動した」
Filmarksでの平均評価は2.2点。このスコアは「見るに値しない」レベルとして認識されています。
ただし、放送から6年以上が経った現在、「あの時代の空気感を残した資料的価値」として再評価する声も一部で出ています。
バーチャルさんはみている黒歴史を調べる人向けの関連情報
制作の裏側から出演したVTuberたちのその後、そして2025年の復活配信まで。黒歴史アニメにまつわる気になる情報をまとめました。
制作会社リドは放送後すぐに解散
「バーチャルさんはみている」の制作を担った株式会社リドは、放送終了からわずか数週間後の2019年4月15日に解散しました。
このスピードには驚きましたよね…。放送終了(3月27日)からほぼ1ヶ月足らずでの解散です。
5社合弁会社・川上量生の無茶振りエピソード
リドはドワンゴ・KADOKAWA・カラー・インクストゥエンター・アソビシステムホールディングスの5社が共同設立した合弁会社で、VTuberに特化したプロダクション事業の展開を目的に設立されました。
制作の裏話として有名なのが、ドワンゴCTO(当時)の川上量生さんによる「無茶振りエピソード」です。
川上さんは2018年9月頃、部下のニコニコ運営代表・栗田穣崇さんに「冬アニメでバーチャルさんやりたいだよね枠取って」と言ったとされています。
つまり、2018年12月の情報解禁・2019年1月の放送開始という超タイトなスケジュールは、このたった一言の無茶振りから始まっていたわけです。制作期間がほぼ3〜4ヶ月しかなかったことを考えると、品質面での問題が起きてしまったのも、ある意味で必然だったかもしれません。
なお、ITmedia NEWSによると、リドの親会社であるバーチャルキャストは1億5650万円の最終赤字を計上しており、リドもその余波を受けて解散したとみられています。
「バーチャルさんはみている」はリドにとって第一弾であり、そのまま最後の作品になってしまいました。
月ノ美兎が語る当時の振り返り
このアニメに出演していたVTuberの中でも、最も積極的に当時を振り返ってくれているのが、にじさんじの月ノ美兎さんです。
月ノ美兎さんは活動8年目を迎えた際に公開した「自己紹介動画」の中で、「バーチャルさんはみている」への出演を振り返りました。
その中で月ノ美兎さんは「様々な影響をVTuber界に与えた…すごいアニメで…」「何物にも代えがたい経験」「そういうアニメがあって、とても業界に貢献した」と語っています。
非常に慎重な言い回しですが(笑)、「貢献した」という表現からは、批判的な評価がありながらも、あの経験に意味があったと受け止めていることが伝わってきます。
ニコニコ大百科の掲示板コメントによると、当時の出演者の中には「台本ありきのテレビのやり方」に対して抵抗を感じていた人もいたようで、演者側が生配信スタイルの掛け合いを望んでいたのに対し、番組側が台本通りの進行を求めたという衝突もあったとされています。
月ノ美兎さんのコメントには、あの作品への複雑な感情と、それでも前向きに受け止めようとする姿勢が感じられます。
出演していたVTuberたちのその後
あのアニメから6年以上が経ちました。出演していたVTuberたちは今どうしているのでしょうか。
| VTuber名 | 所属 | 現在の状況 |
|---|---|---|
| 月ノ美兎 | にじさんじ | 活動継続中。にじさんじを代表する人気VTuber |
| 電脳少女シロ | .LIVE | 活動継続中 |
| ときのそら | ホロライブ | 活動継続中。ホロライブの中でも長年のメンバー |
| ミライアカリ | ENTUM(当時) | 現在は独立・活動継続 |
| 猫宮ひなた | ENTUM(当時) | 現在も活動継続 |
| 田中ヒメ・鈴木ヒナ(HIMEHINA) | 田中工務店 | 活動継続中。歌唱力で高い評価 |
| バーチャルゴリラ | 個人勢 | 活動継続中 |
| 小林幸子(バーチャルグランドマザー) | 幸子プロモーション | VTuber活動継続中。コラボも精力的 |
| ピーナッツくん | 個人勢 | 活動継続中。音楽活動でも注目 |
| ゲーム部プロジェクト | appland | 2021年2月に活動終了 |
特に目立つのがゲーム部プロジェクト(夢咲楓・道明寺晴翔・風見涼・桜樹みりあ)が2021年2月に活動終了していること。2019年当時は動画勢のトップを走っていたグループでしたが、その後「中の人問題」で大炎上し、グループとして活動を終えました。
一方で、当時はホロライブがそれほど大きくなかった時代から出演していた「ときのそら」さんは、その後のホロライブの急成長とともに存在感を増し、現在も人気VTuberとして活動を続けています。
2019年当時のVTuber勢力図と現在のそれは大きく変わっており、あのアニメはVTuber界の「黎明期」を切り取った貴重な資料でもあります。
VTuber界に与えた影響と意義
「バーチャルさんはみている」はVTuber界にどんな影響を与えたのでしょうか。
まず率直に言うと、このアニメは「VTuberに対する一般視聴者のイメージ」に悪影響を与えたとも言われています。「あの番組を見てVTuberはちょっと無理だと思った」というような声も当時からありました。
また、制作会社リドが解散したことで、当初予定されていたVTuber特化のプロダクション事業が立ち消えになり、業界全体の展開に影響を与えた可能性もあります。
一方で、ポジティブな影響も無視できません。
このアニメをきっかけに初めてVTuberを知り、その後ファンになったという人が一定数います。「ときのそら」さんや「電脳少女シロ」さんを初めて知ったのがこのアニメ、という視聴者もいたでしょう。
また、出演したVTuberたちが「VTuberとテレビ・アニメの相性」について現場で直接体験したことで、その後の活動に活かせた部分もあったかもしれません。
ニコニコ大百科の掲示板コメントでは「VTuberがTVバラエティ等に出演する場合、この後にいろんな番組が出てきて長く続いてるものもあるから、VとTVの相性は別に悪くなかった。アニメというラベルと、そのラベルで釣れた潜在層を引き込むには、キャラの数が多すぎて内容が細切れだったのが良くなかった」という分析も投稿されています。
「バーチャルさんはみている」は失敗作として語られますが、その失敗から得た教訓がVTuber界のその後の発展に間接的に貢献した面もあると言えるでしょう。
2025年にYouTubeで全話無料配信
あれから6年以上が経った2025年11月、突如として「バーチャルさんはみている」がYouTubeで全話無料配信されました。
電撃オンラインなどの報道によると、アニメタイムズ公式YouTubeチャンネルで全12話が期間限定無料配信としてスタート。ニコニコ動画でも全話見放題配信が解禁されました。
VTuberコミュニティはこのニュースに大盛り上がり。「伝説のアニメが復活」「懲役4時間43分17秒(全12話合計)」「改めて確認してみようか…」といった反応がSNSに溢れました。
ニコニコ大百科の掲示板には「伝説のアニメバーチャルさんはみているが今なら全12話見放題」というコメントが投稿されました。
また、2023年頃には釣りアカウントが「バーチャルさんはみている 2期制作決定」とツイートして騒動になった一幕もありました。これはすぐにデマだと判明しましたが、それだけこのアニメが今もVTuberファンの記憶に刻まれている証拠と言えます。
「黒歴史」として語り継がれながらも、2025年に改めて全話配信されたことは、このアニメがVTuber界の歴史的記録として再評価されていることを示しています。
バーチャルさんはみている黒歴史のまとめ
- 2019年1月〜3月、TOKYO MXで放送された全12話のアニメ
- 30名超のVTuberが出演するオムニバス形式のミニコント番組
- 制作はドワンゴ・KADOKAWA等5社合弁の株式会社リド
- 庵野秀明がアイデア協力、音楽は中田ヤスタカが担当した豪華な制作陣
- 川上量生CTOの2018年9月の「無茶振り」から生まれた超短期制作のアニメ
- 内輪ネタだらけで初見には意味不明という批判が殺到した
- 「懲役23分」という表現がネット上に広まるほどの酷評を受けた
- VTuberを2次元アニメに当てはめた試みが失敗した「2.5次元の難しさ」が根本原因とされる
- AmazonレビューやFilmarks(2.2点)など各所で最低クラスの評価
- 制作会社リドは放送終了後すぐの2019年4月15日に解散
- 月ノ美兎は「何物にも代えがたい経験」「業界に貢献した」と振り返っている
- ゲーム部プロジェクトはその後2021年2月に活動終了
- 月ノ美兎・電脳少女シロ・ときのそらなど多くの出演VTuberは現在も活躍中
- 2025年11月にYouTubeで全12話が期間限定無料配信されて話題に
- VTuber界の「黎明期」を切り取った資料的価値を持つ伝説の作品


